West Gate Laboratory

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夢のCNC、Kitmill CL100を買いました

はじめに

以前から欲しかったCNCフライス、Kitmill CL100を昨年末ついに買いました。
私の主な用途は基板切削です。

年末年始の間にいくらか使ってみて、とても便利だったので、紹介しようと思います。

Kitmill CL100

Kitmillシリーズは、オリジナルマインド社が販売しているCNCフライスです。

www.originalmind.co.jp

私は電子工作でよくプリント基板を作りますが、以前はエッチングで作成していました。しかし、エッチング液を利用した基板制作は薬剤の有効期限であったり廃液処理だったり、どうにも面倒なことが多いです。
そこで、今回プリント基板の切削にも対応している、オリジナルマインドのKitmill CL100を購入しました。基板加工オプション、その他の細かいオプションを含めて30万強です。

www.originalmind.co.jp

Kitmill CL100は基板加工オプションを購入することで、プリント基板の加工が可能です。以前はKitmill CIP100というプリント基板加工専用のもう少し安価なシリーズがあったのですが、生産中止になってしまいました。

「なぜ自宅に基板加工用CNCが必要なのか?」と疑問の方も多いと思います。今どき基板制作の外注も安いですよね。
一方で、安いといっても送料含めて数千円にはなるし、安くしようと思ったら注文してから届くまで早くても1週間程度はかかるでしょう。しかも、欲しいのは1枚だけだとしても10枚程度は注文する必要があります。
プロトタイプを作ろうというときは、ぱっと設計してぱっと作ってぱっと動作確認したいところです。CNCによる基板加工はこれを実現します。
ブレッドボードが近い存在ですが、やはり最終的にケースに入れることを考えたり、大電流が流れるような回路ではブレッドボードとプリント基板上での動作特性は変わりますから、やっぱり外注前に一枚、プロトタイプ基板が欲しくなります。(購入前、こんなことをアレコレ考えて、悩んだ上で購入しました)

組み立て

Kitmill CL100は、自分で組み立てる必要があります。

注文するとダンボール3箱分くらいの部材が届きます。これを組み立てるのがなかなか骨で、結局「今日はX軸」「今日はY軸」といった感じに組み立てて、5日ほどかかりました。

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組みたった!!

オリジナルマインドのKitmill シリーズ、実は仕事でも少し使っていて、これで組み立てるのは二度目になります。
この製品のすごいところって、組み立て説明書がものすごい丁寧なんですよね。
こうした機械加工系の製品って組み立て精度が加工精度に大きく影響しますが、Kitmillの組立説明書は私のような機械系素人が組み立てても極力加工精度に影響が出ないような書き方をしてくれています。これがとてもありがたい。
例えば、「AをBにネジ止めします」というのも、「Aの右側のネジを軽く留め、下に動かして壁に当てて並行にした状態で全体を仮止めします、その後上下に動かして引っかかりがないことを確認の上ネジを締めます」といった感じです。そのあたりの勘所が薄い人にはこれがとてもありがたい。
このおかげで、組み立てたその瞬間から高精度な基板加工が可能になります。試行錯誤がほとんど必要ないのがありがたい。

動作確認、の前に

組みたったら早速基板加工しようぜ!と言いたいところですが、加工を始める前にモーターの慣らし運転が必要です。15分程度空回しします。これをしないと空回しでも過負荷リミッタに引っかかってしまう場合があります。

動作確認

まずは付属のテストプログラムで捨板(ベーク版)に加工をします。

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動作確認完了

いい感じですね。

生基板を加工する

Kitmillでプリント基板加工をするときは、生基板を加工します。
養生テープでピッタリ合わせた生基板と捨板を、ベースプレートの上に両面テープでしっかりはりつけます。
基板加工オプションのおかげで基板のそりなどの影響なく、一定のクオリティで切削できます。

Kitmillの基板加工オプションの詳細はこちらに公式の情報があります。

「KitMill」による基板加工

最初に作ったのは、ESP32のプログラム書き込み用のシリアルUART変換基板です。

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表面実装パターンも問題なく行ける
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部品実装済
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無事プログラムを書き込めた

こうしたちょっとした基板が、「作ろうかな」と思ったその場で設計して、加工して、はんだ付けして、動いちゃう。このサイクルが数時間で回っちゃうわけです。最高ですね。

両面基板加工

片面基板が加工できるとなると、今度は両面基板加工したくなりますね。基本Kitmillは片面加工がベースですが、ちょっと工夫すれば両面加工もいけます。 色々方法はありますが、厳密な精度を求めなければ、片面加工後基板を外してひっくり返して両面テープで固定し、再度加工すれば、コンマ2,3mmくらいの精度では加工できます。
Kitmillでの両面基板加工はもう少し工夫の余地がありそうなので、いずれ試して記事にしようと思います。

CNC+3Dプリンタで最強の電子工作環境

現在、自宅では3DプリンタとKitmillが隣同士で稼働しています。

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最強のふたり

この2つがあると、回路設計から基板加工、筐体制作まで部屋の中で手を汚すことなく一気通貫で行うことができます。

westgate-lab.hatenablog.com

まとめ

年末に購入したKitmill CL100の紹介でした。基板加工オプションを含めて30万強のこれを高いと思うか安いと思うか人によると思いますが、「素人でも説明書に従って組み立てればすぐに部屋で精度の高い基板加工ができる」これだけでも買う価値があると思います。

今後使っていくうちにいろんなノウハウが溜まってくると思うので、それはそれで別途記事にしたいと思います。

みなさんもCNCで良い電子工作ライフを!