West Gate Laboratory

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3Dプリンタでネジ用ボスを印刷する

概要

3Dプリンタ(FlashForge Adventurer3)でネジ用ボスを印刷する方法などの備忘録。

背景

電子工作で何らか完成品を作ろうとすると、基板を収める筐体が必要になる場合が多い。
昔はタカチのプラスチックケースを選んで、ケースに合わせて基板を設計していたものだ。
だが、今は3Dプリンタがある。3Dプリンタがあれば、基板に合わせて筐体を作ることもできる。

筐体に基板を収める時に必要なのが、基板や蓋固定のネジ用のボスである。
例えば、タカチのTWシリーズでは以下の写真のようなボスがついている。

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ネジ用ボス(赤枠、他も同様)。写真はタカチのTWシリーズ

ネットで調べるといくつか同じようなことを試している先駆者がいる。

voltechno.com

ohmic-electronics.hatenablog.com

いくつか調べるとインサートナットを使っているものもあった。

今回手持ちのFlashForge Adventurer3を使って、M3の小ねじとタッピングネジを対象にボスを作成した。
結果、PLA樹脂で十分な強度のボスが作成できることを確認した。
備忘録を兼ねて、ここに記録する。

環境

  • 3Dプリンタ:FlashForge Adventurer3
  • 素材:PLA
  • ネジ:M3x10なべ小ねじ、タッピングネジ

テストボード作成

ボスの試験用のボードをFusio360で設計する。
ボスの外径は6mm, 7mm, 8mmの3種類。下穴の内径は全て2.5mmである。
(手持ちのAdventurer3だと、内径2.5mmで印刷すると仕上がりは2.0mmくらいになる)

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ボス試験用ボード。ボス外径6, 7, 8mmが各3つずつ

テストボード印刷

3Dプリンタで印刷する。このときのポイントは充填率を100%にすること。(デフォルトは15%)
Adventurer3のスライサーソフトFlashprintだと、スライス設定の その他のオプション→充填率から設定可能。

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後加工

下穴径2.5mmで3Dプリンタで印刷すると若干小さくなって2.0mmくらいになるので、金属にやる場合と同じようにΦ2.5で下穴を開ける。

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下穴を開けたら、なべ小ねじ用ボスに対しては、M3タップを切る。
樹脂の積層が剥がれたり割れたりということはなかった。

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ネジ締め

なべ小ねじは、タップを切ってしまえば普通に問題なく締めることができる。
どの外径のボスであっても、スプリングワッシャが潰れる力で締めても樹脂はびくともしない。

タッピングネジはタップを切るよりも強い力でネジを切りながら締めていくことになるが、これに関してもどのボス外径でも問題なく締めることができた。

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この後、最も外径6mmの最も細いボスに対して、なべ小ねじを限界まで締め上げる破壊試験を行った。
結果、1mmちょっと樹脂を潰しながら進んでいった後、鉄のネジの頭がナメた。
下の画像の手前右がそれである。ネジ下の樹脂が潰れているのがわかるだろうか。

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PLAでもきちんと下穴開けて、タップを切れば十分な強度のボスができるようである。

まとめ

3Dプリンタ(FlashForge Adventurer3)でPLA樹脂を使ってM3ネジ用のボスを印刷した。
印刷するときは充填率100%で印刷し、 なべ小ねじに関しては金属と同様下穴を開けて、タップを切ればM3に対して外径6mmのボスでも十分な強度が出ることを確認した。
タッピングネジに関しても、同様にΦ2.5mmの下穴を開ければ、問題なくネジを切れることを確認した。

これでEagleとFusion3603Dプリンタを連携させた回路・基板・筐体設計が捗る捗る。